業務自動化ツールの三強——Zapier・Make・n8n——は、いずれも「アプリとアプリをつなぐ」という同じ目的を持ちながら、料金体系・対象ユーザー・拡張性の面で大きく異なる。「とりあえずZapierを使っている」という方も、プランのスケールアップ時に月数万円の請求に驚いた経験がないだろうか。
この記事では2026年3月時点の最新プランをもとに、3ツールの料金・機能・コスパを徹底比較する。初心者からエンジニアまで、自分に合ったツールを選ぶための判断基準を明示する。
3ツール概要:それぞれのポジションを整理する
Zapier——「とにかく繋がる」の代名詞
2012年創業、対応アプリ数8,500以上という圧倒的なエコシステムが最大の強みだ。GUIは直感的で、プログラミング知識ゼロでも設定できる。反面、無料プランは月100実行・2ステップまでと制限が厳しく、スケールするにつれてコストが急上昇する。
Make(旧Integromat)——コスパ最強のビジュアルオートメーション
もともとチェコ発の「Integromat」が2022年に「Make」へリブランドした。キャンバス型UIでシナリオ全体を視覚的に把握でき、ループ・条件分岐・データ変換など複雑な処理を直感的に組める。無料プランでも月1,000クレジット(旧称:オペレーション)と太っ腹で、コスト意識の高いユーザーに支持される。
n8n——エンジニアのためのオープンソース自動化
2019年公開のオープンソースプロジェクト。セルフホスト(Community Edition)なら完全無料・無制限で使える。ネイティブ統合は1,000以上あり、HTTPノードを使えば実質どんなAPIにも接続可能だ。コードノード(JavaScript/Python)で自由にロジックを書けるため、エンジニアには圧倒的な柔軟性がある。
料金プラン一覧比較
| 項目 | Zapier | Make | n8n |
|---|---|---|---|
| 無料プラン | 月100実行・Zap5個・2ステップ | 月1,000クレジット・シナリオ2個 | セルフホスト完全無料・無制限 |
| 最安有料プラン | $19.99/月(Professional、年払い) | $10.59/月(Core) | €20/月(Starterクラウド) |
| 上位プラン | タスク数に応じて段階的に上昇 | $18.82/月(Pro)、$34.12/月(Teams) | €200/月(Proクラウド) |
| 対応アプリ数 | 8,500以上 | 2,000以上 | 1,000以上+無制限(HTTP) |
| セルフホスト | 不可 | 不可 | 可(Community Edition) |
| ビジュアルUI | リスト形式 | キャンバス型 | キャンバス型 |
| コード記述 | 限定的 | 限定的 | JavaScript/Python対応 |
| ループ/条件分岐 | 有料プランで対応 | 全プランで対応 | 全プランで対応 |
各ツールのメリット・デメリット
Zapier
メリット
- 8,500以上のアプリに対応——「これは繋がらない」がほぼない
- 設定UIが最もシンプルで、非エンジニアでも即日使える
- 公式ドキュメント・コミュニティが充実しており、日本語の解説記事も多い
- 企業向けサポートが手厚い
デメリット
- 無料プランが月100実行・2ステップと最も制限が厳しい
- 大量実行になるとコストが跳ね上がる(後述のシミュレーション参照)
- セルフホスト不可のため、データを自社で管理できない
- 複雑なループ処理や条件分岐が他ツールより組みにくい
Make
メリット
- 無料プランで月1,000クレジットと業界最大水準
- Core $10.59/月から始められる圧倒的なコスパ
- キャンバス型UIで複雑なフローも視覚的に把握しやすい
- ループ・条件分岐・配列処理が全プランで利用可能
デメリット
- 対応アプリ数がZapierより少ない(ただし2,000以上)
- キャンバスUIはシンプルさを好む人には「複雑すぎる」と感じることも
- セルフホスト不可のためデータ管理はMakeのクラウド依存
- 日本語の公式ドキュメントが少ない
n8n
メリット
- Community Edition(セルフホスト)は完全無料・実行数無制限
- データを自社サーバーで管理できる(コンプライアンス・GDPR対応)
- コードノード(JS/Python)で自由なロジックが書ける
- HTTPノードで事実上あらゆるAPIと接続可能
デメリット
- セルフホストには技術知識(Docker等)が必要
- UI学習コストがZapierより高め
- ネイティブ統合数はZapierの約1/8(ただしHTTPノードで補完可)
- クラウド版はEUR建てで為替リスクがある
月間実行数別コストシミュレーション
自動化ツールの「真のコスト」は実行数が増えると一気に変わる。以下は月100・1,000・10,000実行での概算コストだ。
| 月間実行数 | Zapier | Make | n8n(セルフホスト) | n8n(クラウドStarter) |
|---|---|---|---|---|
| 100実行 | 無料 | 無料 | 無料(サーバー代別) | €20/月 |
| 1,000実行 | 約$19.99/月(Professional) | 無料〜$10.59/月 | 無料(サーバー代別) | €20/月 |
| 10,000実行 | $300+/月 | $100未満/月 | $5〜30/月(サーバー代のみ) | €20/月 |
ポイント: 月10,000実行になると、Zapierは$300以上かかるのに対し、Makeは$100未満、n8nセルフホストはサーバー代のみ。規模が大きくなるほどコスト差は劇的に広がる。
注: ZapierはProfessionalプランの基本価格(年払い$19.99/月)は750タスクが上限です。10,000タスク超となると料金が大きく跳ね上がり、タスク数スライダーで設定が必要です。正確な金額は zapier.com/pricing でご確認ください。
注: Makeは2025年8月よりオペレーション(operations)からクレジット(credits)への課金単位に移行しました(1オペレーション=1クレジット)。1シナリオあたりのクレジット消費数はモジュール数・AI機能の利用有無により異なります。最新の料金は make.com/en/pricing でご確認ください。
ユースケース別おすすめ
ブロガー・個人ユーザー → Zapier(無料プラン)またはMake(無料プラン)
月100回程度の自動化(記事公開をSNS投稿に連携、Gmailの特定メールをNotionに保存など)ならZapierの無料枠で十分足りる。ただし複数のフローを無料で試したいならMakeの方が月1,000クレジットまで無料なのでお得だ。
推奨: Makeの無料プランで始め、必要に応じてCoreへアップグレード
フリーランス・副業ワーカー → Make Core $10.59/月
月数千実行程度の業務自動化なら、$10.59のMake Coreが最強のコスパだ。Zapier Professionalの$19.99と比べて約半額以下の費用で、より多くの実行数・複雑なフローに対応できる。
推奨: Make Core($10.59/月)
エンジニア・スタートアップ技術チーム → n8nセルフホスト
VPSやクラウドサーバー(月$5〜30)にDockerでn8nをセルフホストすれば、実行数無制限かつデータを完全に自社管理できる。コードノードでビジネスロジックを細かく制御したい開発者向けの最強構成だ。
推奨: n8n Community Edition + VPS(Hetzner/Renderなど)
小規模企業(社員10〜50人)→ Make Pro または n8nクラウド
月数万実行が必要で、かつセルフホスト運用の人的コストをかけたくない場合は、MakeのProプランかn8nクラウドPro(€200/月)が現実的な選択肢になる。
推奨: まずMake Proで試し、要件次第でn8nクラウドへ移行
エンタープライズ・コンプライアンス重視 → n8nクラウド商用 または Zapier Enterprise
GDPR・個人情報保護法対応など、データの所在を厳格に管理する必要がある企業にはn8nのエンタープライズライセンス(セルフホスト商用)が適している。ベンダーロックインを避けたくない場合はZapier Enterpriseも選択肢だが、コストは高い。
推奨: n8nエンタープライズ(セルフホスト) または Zapier Enterprise
移行コストも考慮する:ロックインリスク
ZapierとMakeはクラウド専用のため、ベンダー側の料金改定やサービス終了リスクを常に抱える。Makeは2025年8月にオペレーションからクレジット制への課金単位の変更、2025年11月にはクレジット上限の調整など、継続的にプラン内容を更新している。最新の制限や価格は必ず公式ヘルプセンターで確認すること(※最新情報は help.make.com でご確認ください)。
n8nはオープンソースのため、クラウド版の料金が上がってもセルフホストに移行できる。移行コストを含めた「トータルリスク」で評価すると、n8nのセルフホストは中長期的に最も安定した選択肢になりうる。
結論:どれを選ぶべきか
3ツールを選ぶ際の判断軸はシンプルだ。
技術知識がない → Zapierから始める
設定の簡単さと対応アプリの多さはZapierが断トツ。まず無料プランで試し、実行数が増えてきた段階でMakeへの移行を検討するのが現実的なロードマップだ。
コストを最小化したい → Makeを選ぶ
同じ実行数に対してZapierの1/3〜1/10のコストで動かせる。フリーランスや小規模チームにとってMakeのコスパは圧倒的だ。
エンジニアリングチームがある → n8nセルフホストを検討する
初期セットアップのコストはかかるが、一度動けば実行数無制限かつデータ管理を完全コントロールできる。スタートアップのシード期からグロース期まで通用する構成だ。
注: 各ツールの料金は頻繁に改定されます。Zapierは2024年4月に大幅なプラン刷新(Zap数無制限化・組み込みツールのタスクカウント除外・超過分のペイ・パー・タスク課金導入)を実施しています。最新料金は必ず公式サイト(zapier.com/pricing・make.com/en/pricing・n8n.io/pricing)でご確認ください。
まとめ
| 判断基準 | おすすめ |
|---|---|
| 最速で始めたい | Zapier(無料プラン) |
| 無料でできる限り使いたい | Make(無料プラン) |
| 月額コストを最小化したい | Make Core $10.59/月 |
| 大量実行・コスト削減 | n8n セルフホスト |
| データの自社管理が必須 | n8n(セルフホスト or エンタープライズ) |
| エコシステム・アプリ連携数優先 | Zapier |
自動化ツールの乗り換えはフローを再構築する手間がかかるため、最初の選定が重要だ。実行数の見込みとチームの技術レベルを現実的に見積もったうえで、上記の判断基準を参考にしてほしい。