TL;DR
- NordLayerはSASEフレームワークに基づくビジネス向けネットワークセキュリティサービスで、中小企業でも月額$8〜(年払い・最小5ユーザーから)導入できる。
- ゼロトラストネットワークアクセス(ZTNA)・ThreatBlock・SD-WANライクなGateway機能をオールインワンで提供し、複雑なオンプレ機器が不要。
- Zscalerやcato Networksと比較して初期費用・学習コストが低く、IT担当者不在の中小企業でも最短1営業日で展開できる。
はじめに
リモートワークの常態化、SaaSの乱立、そしてランサムウェア被害の増加——。この3つが重なった結果、「社内ネットワーク内にいれば安全」という前提はとっくに崩壊しています。しかし多くの中小企業では、エンタープライズ向けのSASEソリューションは「価格が高すぎる」「専任IT担当がいない」という理由で手が届かないのが現状です。
NordLayerはそのギャップを埋めるために設計されたサービスです。本記事では、SASEの基本概念からNordLayerの具体的な機能・料金・競合比較まで、IT担当者がいない中小企業の経営者・総務担当者でも理解できるよう丁寧に解説します。
SASEとは何か――SD-WANとセキュリティの統合アーキテクチャ
SASEの定義
SASE(Secure Access Service Edge、読み:サッシー) は、2019年にGartnerが提唱したネットワーク+セキュリティの統合フレームワークです。従来は別々に調達・管理していた以下の機能を、クラウドベースの単一プラットフォームに統合します。
| コンポーネント | 役割 |
|---|---|
| SD-WAN | 拠点間・クラウド間の通信最適化 |
| ZTNA | ユーザー・デバイス単位のアクセス制御 |
| CASB | SaaSアプリへのアクセス可視化・制御 |
| SWG(セキュアWebゲートウェイ) | Webトラフィックのフィルタリング |
| FWaaS | クラウド型ファイアウォール |
従来型VPN(仮想プライベートネットワーク)が「接続したら全リソースにアクセス可能」という性質を持つのに対し、SASEはゼロトラスト原則(「何も信頼しない、常に検証する」)を基盤に設計されています。詳しいVPNとの違いについてはゼロトラストVPN徹底比較2026をご参照ください。
なぜいま中小企業にSASEが必要なのか
従来のセキュリティ設計は「境界防御」でした。社内ネットワーク内は安全、外は危険という前提です。しかし現代の中小企業の実態は異なります。
- 従業員のうちテレワーク実施率は正規雇用社員全体で約22%(パーソル総合研究所「第十回テレワーク調査」2025年)、ハイブリッド勤務を含めると多くの中小企業で導入が進んでいる。
- 業務ツールの大半がSaaS(Google Workspace、Slack、Salesforceなど)でクラウド上に存在
- 社内サーバーではなくAWS/Azure/GCPにデータが分散
- モバイルデバイスや個人PCからのBYODアクセスが常態化
この状況で「社内LANにVPNで繋げば安全」というアプローチはもはや機能しません。SASEはこの現実に合わせた現代的な答えです。
中小企業がSASEを必要とする5つの理由
1. ランサムウェア攻撃の標的が中小企業にシフト
大企業のセキュリティが強化されるにつれ、攻撃者は防御の薄いサプライチェーン(中小企業)を狙うようになっています。IPA(情報処理推進機構)の報告でも、ランサムウェア被害の相談件数は増加傾向にあります。
2. VPNだけでは不十分
従来のVPNは接続後に過剰な権限を与えます。従業員が不正アクセスや内部不正を行った場合、社内システム全体に被害が及ぶリスクがあります。ZTNAは最小権限の原則で、必要なリソースのみにアクセスを限定します。
3. IT担当者ゼロでも運用できる
SASEはクラウドネイティブな設計のため、専任のネットワークエンジニアが不要です。NordLayerのようなSMB向けソリューションは管理コンソールがGUIベースで、非技術者でも設定変更が可能です。
4. テレワーク・外出先からの安全なアクセスを実現
社員が空港・カフェ・自宅から業務システムにアクセスする際でも、デバイス認証・多要素認証(MFA)・暗号化通信を一元管理できます。
5. コンプライアンス対応(個人情報保護法・ISO 27001)
アクセスログの一元記録、暗号化通信、デバイス管理機能はGDPR・個人情報保護法・ISO 27001の技術的要件を満たすための基盤になります。
NordLayer SASEの機能詳細
NordLayerはNordSecurity(NordVPNの親会社)が提供するビジネス向けネットワークセキュリティプラットフォームです。2021年のリブランド以降、SASEフレームワークへの対応を強化しています。
Smart Remote Access(スマートリモートアクセス)
NordLayerの中核機能。従来型VPNと異なり、ユーザー・デバイス・アプリケーションの3つの要素を組み合わせてアクセス制御を行います。
主な特徴:
- デバイス信頼性チェック(Device Posture Check): アクセス前にエンドポイントのOSバージョン・ディスク暗号化・アンチウイルス状態を確認。条件を満たさないデバイスはアクセスをブロック。
- アプリケーションレベルのセグメンテーション: 社員AはCRMにアクセス可、社員Bは財務システムのみ、という細かい制御が可能。
- Always-On VPN: 管理者が設定すれば、ユーザーが意識せずとも常時接続状態を維持。
- Split Tunneling: 業務トラフィックのみNordLayer経由でルーティングし、動画視聴などは直接インターネットへ。帯域とコストを最適化。
ThreatBlock(スレットブロック)
DNSベースの脅威インテリジェンス機能。既知のマルウェア配布サイト・フィッシングドメイン・C2(コマンド&コントロール)サーバーへの接続をDNSレベルでブロックします。
ブロック対象カテゴリ:
- マルウェア・ランサムウェア配布ドメイン
- フィッシングサイト
- ボットネットC2サーバー
- アドウェア・スパイウェア配布元
ThreatBlockは複数の信頼できる脅威データベースを統合して悪意のあるドメインを識別・ブロックしています。利用しているインテリジェンスフィードの具体的なベンダー名は公式ドキュメントに明記されていません(最新情報は公式サイトでご確認ください)。
NordLayer Gateway(専用ゲートウェイ)
企業専用のIPアドレスをクラウド上に固定するDedicated Server機能です。
ユースケース:
- IPホワイトリスト管理: SalesforceやAWSのセキュリティグループに「NordLayer専用IP」のみ許可するルールを設定。
- 拠点間接続(サイト間VPN): 本社と支店、または複数のクラウド環境をゲートウェイ経由でメッシュ接続。
その他のセキュリティ機能
| 機能 | 概要 |
|---|---|
| MFA(多要素認証) | Google Authenticator / TOTP対応 |
| SSO連携 | Okta・Azure AD・Google Workspace対応 |
| 暗号化プロトコル | IKEv2/IPSec、OpenVPN、NordLynx(WireGuard基盤) |
| ユーザー管理 | Active Directory・SCIM自動プロビジョニング |
| ログ・監査 | アクセスログのエクスポート(SIEM連携) |
料金プランとSASE機能対応表
2026年3月時点の公式情報に基づく価格です(最新情報はnordlayer.com/pricing/でご確認ください)。全プランに最低5ユーザーの契約が必要です。
| プラン | 月額/ユーザー(年払い) | 最小ユーザー数 | 主なSASE機能 |
|---|---|---|---|
| Lite | $8 | 5 | Smart Remote Access、IKEv2/OpenVPN/NordLynx、MFA |
| Core | $11 | 5 | Lite全機能+ThreatBlock、Dedicated IP、Device Posture Check |
| Premium | $14 | 5 | Core全機能+SSO(Okta/Azure AD)、SCIM、優先サポート |
| Enterprise | 要見積もり | 50〜 | Premium全機能+カスタムSLA、専任サポート |
詳しいビジネスVPN選定基準については中小企業向けビジネスVPN比較2026も参考にしてください。
NordLayer導入手順(5ステップ)
Step 1: アカウント作成と組織設定(所要時間:15分)
- NordLayer公式サイトから14日間無料トライアルを開始。
- 管理者メールアドレスで組織アカウントを作成。
- 管理コンソール(Control Panel)にログインし、組織名・タイムゾーン・請求情報を入力。
Step 2: Gatewayの作成(所要時間:5分)
- Control Panel → Networks → 「Create Gateway」をクリック。
- ゲートウェイのロケーションを選択(60カ所以上から選択可)。
- SharedまたはDedicated IPを選択。
Step 3: チームとアクセスグループの設定(所要時間:30分)
- Control Panel → Users → 「Invite Members」から社員をメール招待。
- 役割・部署ごとにアクセスグループを作成。
- ThreatBlockとDevice Posture Checkをグループごとに有効化。
Step 4: クライアントアプリのインストール(所要時間:10分/端末)
- 社員がメール招待のリンクからNordLayerアプリをダウンロード(Windows/macOS/iOS/Android対応)。
- 初回ログイン時にMFAを設定。
Step 5: 既存インフラとの統合(所要時間:1〜4時間)
- SSOが必要な場合: Control Panel → Integrations → Okta/Azure AD/Google Workspaceを選択してOAuth連携。
- AWSクラウドリソース保護: Dedicated IPを取得後、AWS Security GroupのインバウンドルールにNordLayer IPのみ許可。
競合比較:Zscaler・Cloudflare Zero Trust・Cato Networks
| 比較軸 | NordLayer | Zscaler | Cloudflare Zero Trust | Cato Networks |
|---|---|---|---|---|
| ターゲット規模 | SMB〜中堅 | 中堅〜大企業 | SMB〜大企業 | 中堅〜大企業 |
| 月額最安値 | $8/ユーザー(年払い・5ユーザー〜) | $6〜/ユーザー(ZIA Essentials)※最小規模要相談 | $7/ユーザー(無料枠あり) | 要見積もり |
| 無料トライアル | 14日間 | PoC評価のみ | 最大50ユーザーまで無料 | PoC評価のみ |
| セットアップ難易度 | 低(GUI中心) | 高(専任SE推奨) | 中 | 高(専任SE推奨) |
| 適合ユーザー | IT担当なしの中小企業 | セキュリティ専任チームあり | クラウドネイティブ重視 | 多拠点ネットワークが複雑な企業 |
中小企業のセキュリティ全体については中小企業サイバーセキュリティ2026を参照してください。
IT導入補助金との組み合わせ可能性
2026年度よりIT導入補助金は「デジタル化・AI導入補助金2026」に名称変更・制度改定されました。セキュリティ対策推進枠では、補助率1/2〜2/3、上限150万円(小規模事業者)の補助を受けられます(中小企業は上限100万円)。
NordLayerのデジタル化・AI導入補助金2026ツール登録状況は公式ポータル(it-shien.smrj.go.jp)の「ITツール検索」で「NordLayer」を検索してご確認ください(最新情報は公式サイトでご確認ください)。なお、補助対象となるためにはIT導入支援事業者経由での申請が必要です。
まとめ
NordLayerは中小企業でも最低5ユーザーから月額数千円で、IT担当者不在でもゼロトラストの基本をクラウドで実現できるSASEソリューションです。
NordLayerが特に向いている企業:
- リモート・ハイブリッド勤務が定着している5〜100名規模
- 複数のSaaSを日常的に利用している
- セキュリティ専任担当者がいないが最低限のゼロトラスト対策を始めたい
出典
- Gartner, "The Future of Network Security Is in the Cloud" (2019)
- NordLayer 公式ドキュメント — https://nordlayer.com/features/
- NordLayer 料金ページ — https://nordlayer.com/pricing/
- IPA「情報セキュリティ10大脅威 2025」— https://www.ipa.go.jp/security/10threats/
- Cloudflare Zero Trust 公式ページ — https://www.cloudflare.com/zero-trust/
- デジタル化・AI導入補助金2026公式ポータル — https://it-shien.smrj.go.jp/
- パーソル総合研究所「第十回テレワークに関する調査」(2025年)— https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/telework-survey10/